看護師の仕事は、日々命と向き合う重大な職務です。
彼女たちは患者さんの健康と安全を守るために最善を尽くしていますが、人間である以上、ミスを犯す可能性が0ではありません。
いくつかのミスは、取り返しのつかない結果を招くことも。
心を痛め、夜も眠れない日々、そしてプロフェッショナルとしての自負と向き合いながら、どのようにして彼女たちはこれらのミスから立ち直り、再び前に進むことができるのでしょうか。
このブログでは、そんな深刻なミスを経験した看護師の実話と、その経験が私たちにどのような教訓を与えたのかを共有します。
「仕事を辞めたい…」と思うほどの看護師のミス
看護師が「仕事を辞めたい」と感じるほどのミスは、様々な形で発生し、彼女らの精神的、感情的な負担を増大させる可能性があります。
以下は、そのようなミスの具体的な例です:
- 薬剤の誤投与: 正しい患者に誤った薬を投与するか、誤った量を投与すること。
- 診療記録の誤記入: 患者の病歴や治療記録に誤った情報を記載すること。
- 衛生管理の失敗: 手洗いや器具の消毒などの基本的な衛生手順を怠ることにより感染を拡大させる。
- 患者のプライバシー違反: 患者の機密情報を不適切に扱ったり、話したりすること。
- 手術器具の誤使用: 手術中に間違った器具を使用したり、器具を体内に残したりすること。
- 患者の転倒や事故: 監視不足により患者が転倒するなどの事故が発生すること。
- 緊急時の対応遅延: 心臓停止や重篤なアレルギー反応などの緊急事態に適切に対応しないこと。
- 血液や血液製剤の誤輸血: 患者に間違った血液型の輸血を行うこと。
- 重要な症状の見逃し: 患者の重要な症状やバイタルサインの変化に気づかず、適切な治療時期を逃すこと。
- コミュニケーションミス: 医師や他の医療スタッフとのコミュニケーション不足により、治療ミスや診断ミスが発生すること。
これらのミスは、患者にとって重大な健康上のリスクをもたらすだけでなく、看護師にとっても法的な責任、職業的な信頼の喪失、そして重大なストレスや罪悪感を引き起こす可能性があります。
その結果、看護師は自らのキャリアを見つめ直すことを余儀なくされることがあります。
看護師たちが経験した「取り返しのつかない」ミスの体験談
上記のミスは実際どのような感じで起こったのでしょうか?
ここでは、各ミスをしてしまった看護師たちの経験談をご紹介します。
薬剤の誤投与
「もう、思い出すだけで胸が締め付けられるわ。その日は忙しくて、いつもの倍は働いてたの。患者さんも多くて、ひとりひとりに細心の注意を払うのが難しいくらい。疲れてたけど、それに言い訳なんてできない。
間違えちゃいけない薬を、間違った患者さんに投与しちゃったのよ。すぐに気づいたけど、あの時のパニックときたら…。患者さんは幸い大事には至らなかったけど、私の中で何かが壊れたみたい。信頼って一瞬で崩れるものなんだね。自分を許せなくて、その日は泣きながら帰ったわ。」
診療記録の誤記入
「その夜は忘れもしない。救急搬送されてきた患者さんのカルテを更新するはずが、疲れのせいでしょうか、別の患者さんのカルテに情報を記入してしまいました。気が付いた時には、もう遅く、誤った情報が次の診療に影響を及ぼしてしまったんです。
医師も混乱し、患者さんには不要な検査を勧めてしまった。本当に自分の不注意で起こったこととはいえ、その後のフォローアップに追われ、終わらない説明と謝罪。患者さんとその家族の落胆した顔が、今も私の心に深く刻まれています。
その日以来、カルテを開くたびに、確認の確認を重ねるようになりました。ミスはあってはならないこと、その重みを痛感した出来事でした。」
衛生管理の失敗
「あの日は本当に忙しくて、手を洗う時間すら惜しいくらいだったの。いつもなら手袋を変えたり、消毒したり、患者さんの間を行き来するたびに衛生は徹底してる。でも、あの時はつい...。
一人の患者さんの処置を終えて、次の患者さんのところに急いで...消毒を怠っちゃったの。その結果が、感染の拡大へとつながったんだから、責任の重さを感じるよ。その後、院内で小さな感染が広がってしまって、本当に反省したよ。
看護師として基本中の基本をおろそかにした自分に、もう許せない気持ちでいっぱい。患者さんには直接謝れないけれど、その罪悪感は一生忘れないわ。」
患者のプライバシー違反
「ねえ、これはもう聞いてほしい。病棟で、ちょっとしたおしゃべりが仕事の息抜きになってるじゃない? でも、あの日はその何気ないおしゃべりが大問題になっちゃったのよ。
カフェテリアで同僚とランチしながら、ある患者さんのことを話してたんだけど、声が大きかったみたいで...。それを患者さんの家族が聞いちゃってたの。個人情報の話をこんなところでしてはいけないって、わかってるつもりだったけど、つい...。家族からのクレームが入って、院長まで事態に介入することになって、マジでクビになるかと思った。
患者さんと家族には深く謝ったけど、その信頼を取り戻すのはもう無理かもしれない。プライバシーの重要性を痛感したよ、本当に。」
手術器具の誤使用
「あの手術の日は今でも忘れられない。術後の患者さんが異常な痛みを訴えてね。レントゲン撮ったら、なんと、体内にガーゼが残ってるって発覚したの。手術中に数え間違えたみたいで...。医師と一緒に数を確認したはずだったのに、どうしてこんなミスを...。
患者さんは再手術になっちゃって。自分のせいで余計な苦痛を与えてしまったこと、その責任は重い。その後、どんなに謝っても、患者さんの痛みや不安は消せないんだから。そのミス以来、手術室の雰囲気も変わっちゃって、毎回器具を数えるたびに、あの日のことがフラッシュバックする。
正直、その事件がきっかけで仕事を辞めたくなったほどよ。」
患者の転倒や事故
「もう、あの日のことは忘れもしないよ。ずっとバタバタしてて、患者さんの一人がトイレに立つのを手伝うはずが、他のコールに気を取られてしまって。しばらくして、大きなドンッて音がして、駆けつけたらその患者さんが床に倒れていて...。転倒して腕を折ったんだ。
もう、どれだけ謝っても謝りきれないくらい、自分を責めたよ。転倒予防は基本中の基本なのに、その重要なタイミングを逃すなんてね。その後の患者さんの苦痛、家族の怒り、同僚の失望した顔を見るたび、自分がどれだけ大きな過ちを犯したか、痛感させられた。
その一件で、看護師としての自信を完全に失くしてしまったんだ。」
緊急時の対応遅延
「あれはもう絶対に忘れられない。夜勤中に、私が見守ってた患者さんが急に容態を悪化させたの。アラームはなったけど、他の患者さんも同時に呼び出してて、ただでさえ手が足りない状況で。私、その緊急性を見極めきれなくて、別の部屋に行っちゃったんだよね。
気づいた時には、もう手遅れになりかけてて。急いでコードブルーを呼んだけど、心臓マッサージをする羽目に。あの時の患者さんの青ざめた顔と家族の涙は今でも夢に出る。医療者として、もっと緊急時の判断力を養わないといけないって、その時思った。
ただ、その失敗がトラウマになってしまって、今でもアラームが鳴る度に、あの日のことがフラッシュバックするんだ。」
血液や血液製剤の誤輸血
「もう、思い出すだけで胃が痛むわ。血液型を確認するのは日常的な業務で、いつもはダブルチェックが常識なんだけど、その日はどうしても慌ただしくてね。輸血の準備をしている時、ラベルを見落としてしまって。A型をB型の患者さんに繋いじゃったのよ。数分後に患者さんが反応し始めて、そこで初めて気づいた。
医師に報告して、抗体を投与して、なんとか状況は収束したけど、あの時の自分の不注意には本当に落ち込んだ。患者さんには大きなダメージを与えかねないミスだったし、家族に対する説明も、私にはすごく辛かった。
それ以来、ルーチンワークにも決して慢心しないようにしているけれど、あのミスの記憶は消えないわ。」
重要な症状の見逃し
「あの日のシフトは本当に地獄だった。患者さんたちが次々と急変して、バイタルを取る手も足りないほど。私が担当した患者さんが、朝から少し元気がなかったんだ。でも、バイタルサインには大きな変化がなくて、忙しさにかまけて深刻には捉えなかった。それが大間違いで。
数時間後、その患者さんが急に呼吸困難を起こして...。ICUに運ばれることになっちゃって。もっと早く異変に気づいていれば、もっと早く対応できたのに。その後の自責の念といったら、もうね。患者さんは幸いにも回復したけど、あの時の私のミスは許せない。
今でも、患者さんの小さな変化には敏感になるよう、心がけてるけど...。」
コミュニケーションミス
「あれはもう何年も前の夜勤のこと。混雑してて、ひとりひとりにかける時間が本当に限られてた。医師からの指示があったんだけど、ちゃんと情報を共有できなかったの。私が担当する患者さんに特別な処置が必要だったっていうのに、そのメモをどっかに落としてしまって...。
結局、その患者さんは必要な治療を受けられず、状態が悪化したのよ。あとで全てが発覚した時のショックと言ったら、もうね、自分がどれだけ大事なことを忘れちゃったか。そのミスが原因で、患者さんにもっと苦しみを与えてしまったと思うと、今でも夜中に目が覚めることがあるわ。コミュニケーションって、本当に大切だって、その時痛感したの。」
ミス後は周りの目が変わってしまう…
取り返しのつかないミスをしてしまった時、最も悪影響を与えてしまうのが「周りの目」と言って差し支えないでしょう。
これまで通りのような仕事環境ではなくなってしまうのが最も大きなダメージと言えます。
「そのミスをした日から、周りの見る目が変わった気がするんだ。
同僚の目には同情というか、何というか、ちょっとした変化を感じてしまって。患者さんに対してはいつも以上に丁寧になろうとしてるけど、彼らの視線はどこか遠慮がちで、以前のような信頼感が感じられないんだ。
まるで、みんなが私のことを「あのミスをした看護師」としか見てないみたいで...。あの日以来、チームでのミーティングも居心地が悪い。発言しようとすると、言葉が喉に詰まってしまう。わかってるんだ、一度失った信頼を取り戻すのは時間がかかるって。
でも、この重たい空気は、いつまで続くんだろう。休憩室でも、私が入ると会話がピタッと止まることがあって、そんな時はもう、心が折れそうになるよ。医師たちも、あからさまにじゃないけど、私に対して少し距離を取るようになった気がするし。自分がしたことの大きさ、その影響の全てが、毎日、毎日、私の心を少しずつ削っていくんだ。
あのミスは、私のキャリアにも、人間関係にも、こんなにも大きな影を落とすとは思わなかった。」
まとめ
看護師としての日々は、いつも患者さんの命を預かる責任と共に歩む重い道。ミスを犯した後の日々は、その責任が一層重くのしかかる。特に、重大な過ちを犯してしまった後は、自責の念に加えて、周囲の見る目も変わってしまうことがある。同僚からの微妙な距離感、患者さんの遠慮がちな視線、これまで築いてきた信頼関係の微妙な変化は、心に深い傷を残す。
しかし、失敗から学ぶことも多い。ミスを糧にして、看護技術やコミュニケーションスキルを磨き、もう一度信頼を築くことに努めることが大切だ。自己反省は必要だが、過度な自責感に苛まれ続けることは誰のためにもならない。むしろ、それは自らの成長を妨げ、患者さんへの最良のケアを提供する能力を低下させるだけだ。
そして、時には環境を変える勇気も必要。自分を取り巻く状況が改善する兆しが見えない場合、思い切って他の病院に転職することも一つの選択肢だ。新たなスタートは、過去のミスから離れ、新しい自分を見つけるチャンスを与えてくれる。他の病院であれば、前向きな心持ちで看護師としてのキャリアを再構築することができるかもしれない。新しい環境での再スタートは、自己再生のための一歩となり得るのだ。